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落ち着いた声。
そしてしばらくしてから彼女は再び口を開いた。
今度は少し落ち着いた声だった。
「おじじはあんたみたいに勉強できない、または全くしない子供にそういう…
未来から来たとか本当は秀才だったみたいな記憶を植え付ける仕事をしているのよ。
勉強を熱心にさせようと洗脳するの。
あんた普通に成績悪いでしょ?学習能力は本来のあんたのままよ。
多分、努力して勉強しなかったらもっと成績は悪かったっていうことね。」
相変わらず彼女の口は悪い。
ベランダには植木鉢がちらりと見える。
俺は彼女の話を聞きつつ、
ぼんやりと植木鉢を見ていた。
小学校の時にトマトとか育てていた青い植木鉢に黄色の支柱が伸びている。
「君はなんで気付いたの?」
彼女はもう一度ゆっくりと席についた。
「私は頭がいいから。
気付くまでは寝る時間や食事の時間を惜しんで心を削るように勉強だけをしてきたわ。
倒れたことも1度や2度じゃないわよ。
未来に帰るのを楽しみにしていたから。」
相変わらず僕の目は植木鉢を向いたまま。
何にも見えてないような、オレンジ色の光とぼやける植木鉢の青色だけを認知している感じ…。
でも、彼女は僕を真っ直ぐ見ていたと思う。
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