すごく楽しそうだった。

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すごく楽しそうだった。

「俺はこれからどうしたら…」 ぽつりと出てしまった。 彼女は最初に戻って強い、意志を持った声で話す。 「そんなの人に聞くもんじゃないわ! 自分で決めていいのよ。言いなりになんてならなくていい。」 彼女の目は俺を、俺の心をじっと見ていた。 悔しくて泣きそうなのを堪えんばかりに。 強く強く俺をまっすぐと見た。 「自分のやりたいようにするの。 勉強なんて適当でいいのよ…」 最後はか細い声で言った。 「君は?ずっと頭がいいけど勉強辞めてないよね?」 俺は彼女に聞いた。聞きたかったのだ。 常に上位にいる彼女は並大抵な努力で1位をキープしていたわけじゃないって分かっていたから。 「私は他に何をしていいか分からないから…。」 また声が細くなる。 「じゃあ、 俺と友達になってよ。未来から来た者同士!」 「は?」彼女は意外にも間抜けな声を出した。 「テレビゲーム、ずっとやってみたかったんだ。 今までそうやって遊んだことがないから… 俺と友達になってよ‼︎ 人並みに遊ぼうよ、今から!!」 俺は彼女の手を握って席を立つ。 教科書やノートはグイっと鞄に入れて急いで図書室を出ようとする。 去り際に見えたさっきの植木鉢の支柱には緑の蔓がぐるぐると巻きついた。 紫色の花びらをしまった蕾が一瞬見えた。 図書室を出てとにかく走った。 二人とも上履きのまま、夢中で前だけを見て。 隣で走りながら彼女の方を向くと、 艶やかな黒髪がなびいていた。 彼女の顔はすごく楽しそうだった。                       (完)
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