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「ミオちゃんならドレス何色にする?」
カタログを見ながら萌は私に尋ねる。答えを聞くのが目的じゃなくて、甘い悩みに酔いしれていたいんだと姉の私にはわかっている。
「私ならそのラベンダー色のドレスにする」
「ちょっと落ち着きすぎじゃない?」
「だから萌の好きな色にしたらいいでしょ」
「だってあたしの好きな色って黒だよぉ!?」
こんなやり取りを飽きるほど私たちは繰り返す。
他愛も無くて、キラキラと光が反射するみたいに眩しくて、幸せとは強烈な何かじゃないんだと今頃になって知った。
まさか結婚の話が嘘みたいに消えて無くなるなんて。
今の萌は仕事も辞め、友人と遊ぶことも無く、家の中で一日中気怠そうに過ごしている。
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