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愛花はお父さんかお母さんを呼んで来ようと思った。何分まだ中学一年生だ。こういうとき、どうしたら良いのか分からない。今は両親二人ともリビングでテレビを観ている。
和室を出ようとすると四人いる男の小人のうち一番若そうな茶色い癖毛の小人が愛花の前にトコトコと歩いて来て目の前で両手を広げた。
「大人を呼んで来ないでくれよ。あと一時間で飲み食いはやめてお開きにする。たまには小人にも楽しみを与えてくれないか?」
愛花は眉を下げて思案した。危害を加えられているわけではないし、何より皆んな丸っこくて可愛らしい。放っておいても問題はないだろう。
リビングからお母さんが自分の名前を呼ぶ声が聞こえて来た。
「愛花ー、ちょっと来てくれる?」
「なーに?」
愛花は和室を出てリビングへ向かった。廊下はフローリングでワックスが効いている。いつも休日にお母さんが雑巾で水拭きしたあとワックスをかけるのだ。お母さんは事務の仕事をしているので今日は休みだ。
リビングも作りはフローリングだが真ん中に毛足の長い黒い絨毯が敷いてある。二人座れるタイプのソファーと三人座れるタイプのソファー、それが一つづつ置いてあってお客さんが来ても全員で五人座れる。合皮製で色はグレーだ。友達はお洒落な家に住んでるねと言う。
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