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小人は神棚に置いてあった御神酒用の瓶子の蓋の部分を逆さまにしている。そこに口を付けて日本酒を飲んだ。愛花は顔を顰めた。
そのまま宴会を三十分以上見守った。インターホンが鳴った。愛花は玄関に行く。グリーンのジャンパーを着たピザ屋さんだった。
「ピザを注文された、今井さんの家で間違いないですか?」
「はい」
愛花はお母さんのいるリビングへ行って財布を借りた。玄関に戻ってピザの箱とポテトが入った箱を受け取った。お母さんのところへ持って行くとお父さんが目を輝かせた。
「お、来たな。冷蔵庫にコーラがあったよな。愛花も飲むだろう。今グラスを三つ用意するよ」
愛花は頷いてソファーに座った。この家はキッチンとリビングがアコーディオンカーテンで区切られている。冬はファンヒーターを点けているのでアコーディオンカーテンは閉めっきりだ。お父さんはキッチンへ行くと声をあげた。
「あれ?ビールとワンカップがない気がするけど……」
愛花は焦った。中学生の自分が飲んだとも言えないし、お姉ちゃんだって飲める歳ではない。お母さんは下戸だ。
「気のせいじゃない?お父さん以外誰も飲む人いないよ」
「そうかな。今朝確認したときはあったんだけど、仕方ない。今夜飲みたいから後でリカーショップに行くか」
お父さんは日曜日だけが休肝日でそれ以外は毎日飲む。流石に日本酒は金曜日しか飲まないが。
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