小人がいました

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 ピザの箱を開ける。カニのピザだ。四種類の種類が一つになったものだ。途端に食欲が湧く。お腹がグルグル鳴った。  コーラで乾杯をする。ドラマの再放送では刑事が死体遺棄現場で検証をしていた。食事中に血だまりを見るのは誰でも嫌だ。愛花はお父さんやお母さんに訊かずチャンネルを変えた。千葉へ美味しい魚介類を食べに行く番組をやっていた。ここは群馬県だ。海がない。夏には海に行くが、愛花の家族は新潟とか茨城に行く。  テレビを観ながら皆んなでピザを食べていると和室の方から小さな叫び声が聞こえて来た。お母さんは和室の方角を見て首を傾げる。愛花は誤魔化すために言った。 「隣の(うち)のおじさん、昼間から飲んでるみたい。なんかドジしちゃったんじゃない」  お母さんは納得したようだ。目じりを下げて笑う。 「祝日だと昼間から飲む人が多いみたい。私の会社にもいるの。この家の近所に住んでる部長の清水さん。前に来たことあるでしょう。太った大柄な人。お兄さんが開業医をやっていて、美原町クリニックだよ。祝日や休日になると二人でぐでんぐでんになるんだって。飲みすぎて夜になると何本飲んだか分からないくらいらしいの。大抵思っていたより多く飲んでるって言ってたよ」  その人の家にも小人がいて飲まれているんだろう。そういえばさっきの叫び声が気になる。愛花は立ち上がった。 「トイレに行ってくる」  いったんトイレに行ってから和室を見てみよう。愛花はそう思って廊下を歩いた。白いクロスが貼ってある壁はクリーム色だ。この家はまだ新しい。小人は何年前から住み着いているのだろう。  和室の襖を開けると倒れている男の小人の周りに全員が集まっている。何があったのか。楽しそうだった場は空気が張り詰めている。 「なにがあったんですか?」 「寝てたと思っていたらいきなり痙攣しだしたんだ」
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