小人がいました

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 愛花は寝ている小人の手首を親指と人差し指で軽くつまんだ。脈は力強く打っている。少し寝かせて様子を見るしか方法はないだろう。小人が病気だからと救急車を呼ぶわけにはいかない。そう考えていたら女の小人が言った。 「清水さんちの小人は病気を診れるんだったよね。住み着いている家も医者だし薬も知識もあるんじゃない?」  男の小人が手を叩く。 「そうだ。呼んで来よう。でも昼間に道路を歩くと目立つな。隠れながら歩くと小人の足じゃかなり時間が掛かる」  愛花はどうしようか迷った。自分が呼んできてもいいが病気を診れる小人のことを知らない。それにその家の人もいきなり愛花が行ったらいぶかしがるだろう。なにかいい方法はないものだろうか。 「愛花ー。トイレのついでに何してるの?ピザが食べかけだよ」  お母さんが呼んでいる。ピザを食べている場合ではないのだが仕方ない。食べ終わったらまた和室に様子を見に来るか。愛花はリビングに戻った。  小人が言っている清水さんとはお母さんの会社の人の(うち)だろう。家が医者だっていうから確実だ。なんとか清水さんの家に行く理由が思い浮かばないと小人の命が危ない。愛花は急いでピザを食べ、テレビを観ながら考えた。取り敢えず清水さんのところに行ってみようか。 「お腹いっぱいになったから散歩に行ってくる。天気もいいし近所をくるっと回ってくるね」 「ああ、お父さんはリカーショップに行く。お母さんはどうする?」  お父さんがお母さんに笑顔で訊く。 「私は美容院に行って来ようかな。そろそろ切らないと前髪で前が見えなくなっちゃう」  愛花にとってそれは好都合だ。小人を呼んできてもコソコソ隠れないで済む。
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