小人がいました

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 愛花は一人で家の中を見て回った。神棚のある和室があった。 「小人さん、いるなら出てきて。私んちにいる小人が大変なの」  押し入れの襖が開いて四十代くらいの目がくりくりした小人が出て来た。白い服を着ている。小人は愛花をジッと見た。 「大変って病気かい?君は何処の家の子供かな?」 「私は清水さんの弟と知り合いだったの。今井愛花っていうんだよ。家に住み着いてる小人が宴会の途中で痙攣して意識がなくなったの」  小人は顔を顰めた。それから眉間に指をあてて考えている。 「私たちの種族はね、急性アルコール中毒になると痙攣を起こすんだ。かなり飲んだんだろう。ビタミンが入ったスポーツドリンクをたくさん飲ませたほうがいい。確かクリニックに肝臓の薬があったから持って来る」  小人はそう言うと和室を出て行った。愛花は五分くらい待った。飲みすぎだったんだと思う。  小人は白い錠剤の薬を愛花に渡した。人間が飲むものだ。 「なにかで砕いて飲ませてくれ。それとも私も行って診てあげようか?愛花さんのダッフルコートの中に上手く隠してくれないか?」  愛花は頷いた。膨れるだろうが、そんなことを気にしている場合じゃない。急性アルコール中毒って死ぬこともあるんだろう。  清水さんの家のリビングもソファーがあった。茶色の合皮で出来ている。兄弟二人はビールをグラスに入れて飲んでいる。愛花は声を掛けた。 「風水的に問題はありませんでした」  医者のお兄さんは頬をあげて笑った。屈託がない。 「コーヒーでも飲んで行くかい?」 「いいえ。また来ます。ありがとうございました」  愛花はお腹のぽっこりを隠しながら言った。  清水さんの家を出て帰路に就く。途中のコンビニでビタミン入りのスポーツドリンクを買った。大通りから住宅街へ入る。来るときよりも風が強くなった。群馬県は冬はからっ風が吹く。他の県から引っ越して来た人はこれに驚くことが多い。
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