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「あー、そこじゃないんだよな。もうちょっと内側なんだよ。あともうちょっと強く叩いてほしい。うん、やっといい感じになってきた」
「うがあああ!!」
いい気持ちでコメントしてたら、いきなり妻のみさえが首の後ろをチョップしてきた。あまりの不意打ちに、俺は危うく舌を噛んで口の中を血の海にするところだった。
「何すんだよ!」
「うっさいクソ亭主! 出勤前の忙しい時間にいっつもいっつもてめえの肩を叩かせやがって! あんたはリモートだからのんびりしてられるけど、こっちは暇じゃないんだよ!」
もうあったまきた! と言いながら、みさえはスマホでどこかに電話をかけ始めた。
「あーもしもし? 例のものお願いします。はい、今すぐ寄越してください。よろしくお願いします」
「なんだなんだ? 何を呼んだんだ?」
みさえは俺を振り返って言った。
「何って、かたたたきねこよ」
「なんだよ、かたたたきねこって」
「だから、かたたたきねこは肩を叩くねこよ」
みさえは「あー忙しい」と言いながら、会社に行く用意を始めた。
「ふうん」
俺もそれ以上は何も聞かずに流した。だって恥ずかしいじゃん。俺が知らないだけで「かたたたきねこ」が世間の常識だったら。それにもうすぐその「かたたたきねこ」とやらはうちにやってくるそうだ。
それにしても舌をかみそうだな、かたたたきねこって。
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