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「あ、美里ちゃん? 昨日はごめんなさい、佳奈ちゃんがどうしても私たちと遊びたいっていうもんだから」
嘘ばっかり。私は心の中で呟く。
「それでね、明日で夏休み最後じゃない? だから、みぃんなでプールに行こうって話になったの。美里ちゃんも一緒に行こうよ。ちゃんと迎えに行くから」
正直言って里奈なんかと遊びたくはなかったがプールは魅力的だ。何より大勢で行った方が楽しいに決まってる。今回は家まで迎えに来ると言っているからすっぽかされる心配もないだろう。もしすっぽかされたとしてもダメージは小さい。
「うん、わかった。準備して待ってる」
私の返事を聞いて里奈は嬉しそうに笑う。翌日、里奈たちは約束通り私の家に来た。
「美里ちゃんお待たせ! さ、行こう」
プールはとても楽しかった。みんなできゃあきゃあ言いながら水を掛け合い、ビーチボールで遊ぶ。そんな中、里奈はお稽古ごとがあるからと一人途中で帰っていった。本人がいなくなるとついつい悪口を言いたくなるのが人の性というものだろうか。里奈の狡猾な態度を快く思っていない女子は思いの外多く、皆で日頃の不満をぶちまけあった。
「あの子さ、よく考えると狡いよね。気に入らない子がいても絶対自分では何も言わずに誰かにいじめさせるじゃん」
「なぁんだ、みんなそう思ってたんだ。だよねぇ、ほんと狡い」
最後は悪口大会みたいになってしまった。両親から口を酸っぱくして他人の悪口を言うものではないと教えられていたが、たまにはいいだろう。何となくスッキリした気分で更衣室で着替えを済ませる。
「あれ?」
女子更衣室を出た所は広いスペースになっておりそこに男女兼用の靴置き場がある。隣が男子更衣室の出入り口だ。
「ねえねえ、私のサンダル知らない? 赤いサンダル」
いくら探しても履いてきたサンダルが見当たらない。一緒に来た友達は皆口々に知らないと言う。
「ごめん、私この後英会話あるから」
「あ、もうこんな時間! 怒られちゃうから帰るね」
気付けば私一人が靴置き場でぽつねんと立っていた。
(どうしよう、どうしよう。裸足じゃ帰れない。それにお母さんに買ってもらったばかりのサンダル……)
思わず涙が込み上げる。
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