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「初仕事って、何をやればいいんでしょう」
「うん、まずはあいつの状態と目的を見極めないとな」
「状態と目的」
青光が壁から顔を覗かせると、長い前髪の奥からこちらを凝視する大きな目玉がそこにあった。
「うわあぁぁ!?」
あやかしの指が顔に届く前に、体が後ろに浮いて、気がつくと先ほどの部屋の中にいた。
ぱたん、と襖の閉まる音で振り返ると、春風が閉めた襖越しに耳を澄ませていた。
「どこにいるの」
地の底を這うような低音が響き、右から左へと着物を引き摺る音を立ててあやかしが通り過ぎていく。
どこか恨めしげに響く声は、かすれた女性の声に聞こえた。
「書庫の方へ向かったな」
気配が遠ざかり、春風は青光を安心させるように呟いた。
「あの、さっきは助けてくださってありがとうございます」
「礼なんていらない、俺はきみの守り神だからな! まあ、初仕事だなんだとけしかけて連れて行った俺が威張れることではないな。ごめんな」
「そんな、俺なら大丈夫ですから!」
申し訳なさそうな春風の姿に、青光の緊張と恐怖で震えていた体が落ち着きを取り戻す。
「あのあやかしは、俺たちを探しているんでしょうか」
「どうかな。何かを探す行為は未練に由来する」
「未練……まるで恨みをもっているような声でしたね」
「未練とは様々だからな。恨み、怒りや憎しみ、諦めきれない強い想い。きみの母君への想いのように」
「そんな誰かの想いを利用するなんて!」
先ほどから感じていた不快の正体に、青光は静かに怒りを燃やした。
ひどく侮辱された気持ちだった。
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