第一話 看取り屋・青の一族

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 金色の着物に花弁を思わせる純白の羽織姿のあやかしは、ひとつに結った長い髪を揺らし、迷子のように部屋を見渡した。 「ここは?」  柔らかく、はっきりとした声だ。  正気に戻ったのだと、青光は嬉しくて駆け寄ろうとしたが、 「どこにいるの」  何者かを探す強い眼差しに圧されて、その場で立ち止まった。 「あなたは知っているの」 「それは」  あやかしが縋るように青光に手を伸ばす。  しかし、春風の視線に怯んだのか、白く細い指が青光に触れることはなかった。 「教えてください」 「すみません、俺は」 「あのひとは、ひとりで寂しい思いをしていないでしょうか」  吐き出されたのは恨み言ではなく、相手を思いやる言葉だった。  彼女の大きな瞳は、不安そうに涙で濡れていた。 「あのひとは、ひとりで苦しんでいないでしょうか」  あやかしの姿と自分の姿が重なって、先ほどの春風の言葉がより深く胸に沁みた。  青光は自らあやかしの手をとると、穏やかに微笑んだ。 「こんなにもあなたに想われているんです。そのひとは孤独ではありませんよ」  あやかしは目を見開いて、 「本当に?」 「はい。きっとそのひとも、あなたを想っている。あなたが寂しくしていないか、苦しんでいないかと」  知りもしないのに無責任だ、と責められるかもしれない。  だからこそ、この言葉は青光の祈りだった。  左手側に控える春風が、そっと寄り添ってくれた気がした。
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