第一話 看取り屋・青の一族

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 キンセンカの座っていた場所には、花をあしらった簪が残された。 「よくやった、青光」  春風に労われて、青光は張りつめた気を解すように深く息を吐き出した。   「これで、よかったんですよね。俺は間違っていませんか」  あやかしにかけた言葉は本心だが、やはり不安だった。  心配そうに見上げる青光に、春風は優しく目を細めた。 「キンセンカはきみに看取られて、無事に旅立てた。これでよかったんだ」 「それなら、よかったです」  青光はほっと胸を撫で下ろし、あやかしが残した簪に視線を落とす。 「なるほど、スイセンと同じか。キンセンカとはキク科の方ではなく、スイセンのことだな」  簪を眺めていた春風が自己完結したように呟いた。 「キンセンカに種類があるってことですか」 「キク科ならポットマリーゴールドをそう呼ぶ。だが、この簪の花はスイセンだろう」  促されて、青光は簪を手に取った。  水晶のような透明感のある質感の白い花は、たしかにスイセンに見える。 「真ん中にある黄色い部分を黄金の杯、つまり金盞にたとえたことから、金盞とはスイセンの別名なんだそうだ」  白い花の中央には、同じ材質の黄色の杯があった。  あのあやかしのように可憐な花だと思った。
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