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はぁ〜…。鏡に映るあたし、ほんとに可愛くない。
鏡に映る自分を見る度に溜め息をつくのは、これで何度目?
え? 今の声は…?
もう、とろいなぁ。
ア、タ、シ、だよ。
そう言って鏡に映るあたしが呆れている。
そのもうひとりのあたしがあたしをじっと見つめてきた。
『ねぇ、あんたとアタシってほんとにそっくりだよね!』
うん、そりゃあたしだもの。
『一日くらい入れ替わっても誰も気づかないんじゃない?』
もうひとりのあたしは、クスクス笑いながらそう提案した。
『いや、流石に気づくでしょって今思ったよね?大丈夫、誰もわかんないって!』と慰めになっていない慰め方をしてきた。
あたしは鏡に閉じ込められた。
それももうひとりのあたしが退屈を凌ぐために。
暇だな、鏡の中はすることがないな。
そうぼやいていたら、突然鏡の外の世界が写った。
その先には、もうひとりのあたしがあたしとして振舞っていた。
もうひとりのあたしは、笑いながら友達と鬼ごっこをしていた。
夕方になってもうひとりのあたしは友達と別れてなんてことないように『ただいま〜』って家に帰ってきた。
ママは、もうひとりのあたしをみて気付いてくれるよね。
『もう、〇〇ちゃん!こんなに泥だらけになって!お風呂入ってきなさい!』ってもうひとりのあたしにママは怒ってる。
ママ、その子はあたしじゃないよ。
どうして、気付いてくれないの。
『あはは、やっぱり気付かれなかったでしょ!』ってもうひとりのあたしはケラケラ笑っていた。
あたしは泣きそうになった。
誰も気づいてくれなかったから。
『そりゃそうでしょ』
もうひとりのあたしは何言ってんの?って顔をしている。
『だって、アタシはあんただもん』
え?あたしなの?
『うん。アタシはあんたの影からうまれたの』
ねえ、あなたは誰?
『アタシは、ドッペルゲンガー』
ドッペルゲンガー?
あの、ドッペルゲンガー?
『そう。あのドッペルゲンガー』
もう晩御飯できたわよーってママが呼んでいる。
行かなくちゃ。
あれ、 動けない。
『そりゃそうでしょ。』
ドッペルゲンガーは続けて、『アタシのこと呼んでたからね』と笑った。
いまいくー。とドッペルゲンガーはママのもとに向かっていった。
ママは、気づいてくれなかった。
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