魅入られて2

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魅入られて2

「遥、落ち着けって。あんなとこでお前……。悟史との関係がバレるだろ?」 「だってあんなもので……。馬鹿にしてる。悟史が可哀想だ。ううん、俺が殺したようなもんだ。俺さえ道路に出なければ……。俺が……」 「馬鹿。そんな事……言うな」 「どうして……?どうして1人で逝ってしまったの?俺も連れて行ってほしかった。悟史に置いて行かれた俺は……どうしたらいいの?」 遥の震えるか細い背中を弘明が抱きしめた。 「俺はお前が生きててよかった。悟史に……感謝している」 「……え?」 「俺、お前が好きだった。悟史さえ居なければ……なんて本気で思っていた"ずるい男"なんだ。まさかこんな……。本当に居なくなっちまうなんて思ってもいなかった」 【弘明が?俺を……?】 「離……して」 「遥……好きだ」 「離してっ」 遥はその場から飛び出した。靴を履くと外に駆け出す。 「遥っ!」 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 『俺、お前が好きだった。悟史さえ居なければ……なんて本気で思っていた"ずるい男"なんだ。まさかこんな……。本当に居なくなっちまうなんて思ってもいなかった』 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 「信じ……られない。弘明があんな事を」 【俺達の事を1番理解してくれてると思っていたのに……】 目をギュッと瞑り走る遥は不意にドンッと誰かとぶつかった。 「あっ」 遥はそのまま尻もちをつく。 「す……すみませ……」 スッと手を出し、遥の腕を引いて立たせる男ーーー 先程弁護士に封筒を投げつける遥を見ていた男だった。 「お怪我は?」 「い……いえ」 遥は大の大人が涙を流しているなんて……恥ずかしくて顔を伏せ、相手の顔を見ようとしなかった。 「……細いな」 「え……?」 「一真(かずま)さん?」 その時遥は初めて男を見た。 既に男は名前を呼んだ女性の方へ歩き、遥が見たのはその男の後ろ姿だけ。 【喪服を着ていたから悟史の知り合いだろうか?】 「かずま……」 初めて聞く名前だった。 遥は男の背中から目を逸らすとフラフラと歩き出す。一真は再び遥の方を振り返った。 「田崎……」 「はい。何でしょうか?」 「あの青年の素性を調べてくれ。くれぐれも内密に……な」 「はい。分かりました」 【はるか……か。顔に似合った美しい名だ】 「一真さん?もうお焼香は済んだのでしょう?早くこんな陰気臭い服を脱いで食事に行きましょうよ。今日は……そうねぇ。フランス料理がいいわ」 「……あぁ」 「まったく。あの運転手ったらろくな事しないんだから。寝覚め悪いったらないわ。あちらの遺族、お金受け取ったんでしょうね?」 「いえ、突き返されてしまいました」 弁護士がそう言った。
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