決戦の日

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決戦の日

 アイトールが小柄な姿になったのは数日前の事だった。  その日、暗黒が世界中の空を包み込んでいた。  「世界の終末が来るのではないか」と人々は恐れていた。  魔王が力を最大限に示し、勇者の一行と戦っていたが故の出来事だった。  ダリオはその日、戦場に居た。  師匠と共に勇者一行として、魔王の前に立っていた。  盾を手に持ち、師匠であるアイトールに迫りくる魔術では防げない物理的な攻撃を跳ね返し守る。  それが彼の役目だった。  道中で出会った仲間の多くは負傷し離脱、また最後の戦いまで残った精鋭たちは、迫りくる魔王の配下達の足止めの為にその場に残り別れていた。その者達の生死については、希望が持てない事を魔王の元までたどり着いた誰もが理解していた。ダリオは同行してきた者たちの中でも身体そのものが丈夫であり、知恵もあり、機転も効いた。  闘いに専念する勇者に、賢者を守る余裕はない。だが、勇者だけでは打ち破るには能力が足りない。その為、魔術には長けている賢者が必要だった。  しかし、その為の術を発動させるには隙が大きく、無防備になったそのタイミングで攻撃されてはこれまでの努力が無駄になってしまう。 ―― 賢者を守り、共に魔王を打倒せ!  結果として、多くの者に託されて、ダリオはそこに居た。その期待に応え、確かに彼は役目を全うし、賢者を守り抜いた。  その身体に合わせて丈夫に作られている服も、それ以上に丈夫な体も、傷を負ってボロボロとなったダリオは、アイトールの長きにわたる詠唱が終わるのと共に勇者へと聖なる力が宿るのをその場で目の当たりにした。  勇者がその力を受け、今までは魔王の持つ力と拮抗していた剣の一閃は光輝き、暗黒に染まった空までも真っ二つへと切り裂いていく。  眩しい太陽の光が暗黒の間から射しこみ、魔王の身体も足元から崩れ塵のように舞い始める。  ダリオが守った事で、賢者・アイトールの術は成功。  その術を受けた勇者・マルクの一撃により魔王は打ち倒された。  これは誰もが知る事であり、だからこそ『森の大賢者』アイトール自身ではなく、その弟子・ダリオであれど、相談の列が出来ていたのだった。  けれど、この話には続きがある。
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