戻ったのは

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 結果として、元来コミュニケーションが得意ではない青年は、盛大な誤解を招いたのだった。  青年は部屋の中で、服のポケットから取り出した勇者と賢者を、机の上にハンカチを広げて寝かせてはみた。どうしたら良いのか皆目見当がつかない。  普段は助言をしてくれる賢者は今、眠ったまま。  そう思い弟子が師匠を見つめた瞬間、その目がゆっくりと開いた。 「お師匠……?」  おそるおそる青年が話しかければ、師匠はピクリと反応し、なんとか起き上がろうとする。 「だ、駄目です!術を受けています、無理に起き上がらないでください!」  起き上がらない様に、けれども、潰す事も無いように青年が師匠の上に掌をかざす。確かに身体の大きな弟子ではあるが、自身に対してあまりにも大きすぎる手を見て、師匠は目を大きく開いた。すぐに、全身の痛みを感じて素直に言う事を聞いて、現状を把握する事を優先する事にした。 「一体、何があった……?」  ダリオはここで、アイトールへここまでの経緯をかいつまんで説明をした。  残されている時間がどれほどか分からない為、焦っていながらも、大賢者の弟子である彼の説明は的確だった。  彼の言葉で状況を理解したアイトールは、ゆっくりと瞳を閉じて、それから穏やかに微笑んでこう言った。 「……王の言っていた湯へと、私達を連れて行け。その湯につけてくれれば、何とでもなる」
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