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1年前 小説の中で出会った憧れの人
本屋に売られていた一冊の本。最初はただ単に、「リアル過ぎて鳥肌が止まらない!!」という在り来りな帯の見出しに惹かれただけだった。気付けばレジを通って、店を出ていた。
自宅に戻り、本を開く。その後は、黙々と読んでいた。その日の行動は、「本を読んだ」こと以外を覚えていない。それほど、夢中になった。やがて、本の後書きに辿り着く。それを読んだ瞬間、本当の犯人が私には分かってしまった。
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皆さん初めまして。この本の作者・紺野真です。この本は僕のデビュー作にあたるのですが、新人賞を頂くことが出来、あとがきも書かせて貰えて、本当に光栄です。
では、早速この作品風景をおさらいしていきましょうか。まず、この主人公・今野が大学の同期である友人を連れて、絶壁の島へ辿り着きます。そして、次々と真夜中に仲間が殺されていく…。連絡手段も断ち切られ、迎えの船が到着するまでの3日に渡る悲劇と殺戮の物語。犯人は殺害する際に「良い夢を」と言っていた。しかし、この話には犯人は最後まで現れませんよね。主人公達は、恐怖に脅えながら地元へ帰還して行ったとしか書いていないのですから。その後の出来事は、読者の皆さんに託されている、と思って頂ければ幸いです。
実はこの話、僕の実体験を元にしているのです。少々書き換えてはいますが、中々スリルがあって、僕としてはとても楽しかったですよ。そう言えば、僕の友人が何者かに殺害されたと言う報道があったのですが、本当にあの殺人鬼が、僕らに迫っているのかも…。そう思うと本当にゾクゾクして面白いですよね。
では、次回作をお楽しみにして下さいね。良い夢を。
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「うそ…まさか…」
「リアル過ぎて鳥肌が止まらない!!」それは本当にその通りだ。描写が常に生々しく、目の前でそれが起きているように感じる。疑いたくはない、疑いたくは無いけれど、やっぱり…。
「作者さんが本当の犯人だ…」
私は恐ろしくなり、答えに蓋をした。けれど、本当にこれが事実なら教えて貰いたい。殺しについて。私はこの人に、憧れてしまったのだから。
1年後、私は作者本人と出会う事を、この時はまだ知らない。
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「こ、紺野!許してくれ!!」
「許す?僕は何を許せば良いのですか?」
「だ、大学時代に俺たちがやった事を恨んでるんだろ!?今ならまだ間に合う!だから」
「捕虜は大人しく黙ってれば良いんです」
そうして僕は大学時代の友人を殺した。誰にも見つからない地下牢で。冷たいコンクリートに血溜まりが出来始める様をずっと見つめていた。ナイフの血を拭き取り、部下に処理を命じる。
「よくも真実を動画にしてくれましたね。まぁ、もう動画は消しましたけど。さて、また新しく書かなければ…その前に」
ネタ探ししないと。
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