2滴目 闇カジノ潜入編

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「おや、食い付いたようですよ。仕掛けますか」 視線だけずらすと、篠宮がこちらを見ている。先生が笑顔を作り、私を連れて、篠宮に寄る。 「篠宮オーナー、ここのカジノは初めて来たのですが、とても素晴らしいですね…!!」 「そりゃあ良かったです!ここは、設計にもこだわりましたからな!ハハ!」 篠宮は、殺し屋が目の前にいることを解っていないようだ。それなら、色々と都合が良い。 「先程から、仲むずましい様子で…、恋人同士かな?」 「ええ、とても可愛らしくて一目惚れだったんですよ。頑張ってアプローチしたものです…!」 先生が私を引き寄せ、肩を抱いた。先生の体温が伝わってくる。それからも、先生と篠宮は会話をしているけれど、「可愛い」とか「一目惚れ」とかの単語で、照れてしまった。作戦のうちだと解っていても、照れるものは照れるんだ。だって、言われたことないから。 「失敬、もう1人来る事になっているので、迎えに行ってきますね。オーナー、彼女の事をお願いしても?」 「えぇ、解りました。お嬢さん、こちらへどうぞ」 「ありがとうございます、オーナー」 先生が去り、ピンマイクに声が入る。 「取り敢えず、お酒を嗜んで下さい。そこから仕掛けます」 「オーナー、私とお酒呑みませんか?」 「え、えぇ…良いですよ」 ちょっと空白があったけれど、まさか気付かれたりしてないよね…?バーカウンターへ行き、ウイスキーを注文した。1口含むと、熱が喉に伝わる。オーナーはと言うと…、 「…へ?」 1口だけで、酔っ払ってしまったようだった。お酒、弱いんだ…。私、ウイスキー20杯呑んでも酔い潰れたことないよ…?それは、強すぎるからか…。 「うぅ…気持ち悪い…うぷっ」 「あぁ、我慢して下さい、御手洗まで行きましょう、ね!」 オーナーの肩を担ぎ、トイレまで行く。女子の私が男性用トイレに入るのは…と思い、身体障害者用トイレに入った。 「オロロロロロロロ…!!!」 まさか、ここまで弱かったなんて…。本当は逆になる気でいたのに…。介抱されて、部屋に行って、グサッと…みたいな?篠宮の背中を摩っていると、ピンマイクから声が聞こえる。 「まさか、弱点が酒だったとは…。初耳ですね」 先生も同じ事を思ってたようだ。 ガシャン……。ウィーン…。 「オーナー!どうされました!?」 入口を見ると、スーツを来た若い男性が居て、こちらに駆け寄ってきた。何処と無く、。 「はは…、酒を呑んでな、気分が悪くなってしまって、そこのお嬢さんに助けてもらったんだよ。だから、敵意を向けるな…」 「そうでしたか…」 「此奴は、儂の側近の黒木と言うんだ」 顔色が良くなってきているオーナーに謝らなければ。 「オーナー、ごめんなさい!私がもっと気を付けてい、」 「はぁ、全く。ジジイがアル中で死ななくて良かった。ある意味な」 バンバンバン……!!! 血飛沫が顔に数滴、散る。黒木さんは篠宮の頭を撃ち抜いた。そして、私にも銃口を向け、しゃがみ顎を掬った。 「お前、なんで彼奴と一緒に居るんだよ。俺の方がもっと的確に、殺しを教えてやれるのに。勿体ないな」 "彼奴"って先生の事…? 「フッ、お前、気に入った。ちょっと来い」 「嫌!!やめて…!うっ!」 口に布を当てられ、意識を無くした。 -------○-------○ 僕は遥のいるベンツに戻り、ピンマイクから音声を聞いていた。すると、びっくり。篠宮は酒に弱かった。まぁ、少し可愛い弱点だか知れてよかった。 「遥、篠宮は酒に弱いみたいですよ」 「ほぉ、瑠衣が呑ませたんか」 「僕が指示をして、呑ませるように仕向けたんですよ…ん?」 瑠衣は、介抱をしているようだか、知っている声が混じる。瑠衣でも無く、篠宮でも無く、僕が知る1。 「まずい事になった…」 「は?何だよ」 「彼奴が来たんだ!!瑠衣が危ない!!」 「おい!!待て!」 遥の制止が入ったが、無視して瑠衣の元へ急ぐ。 -------○-------○ 頭が痛い…。身体が…動かない。薄らと視界が開ける。 「あぁ、起きたか?」 「っ!貴方は!これ!取って下さい!!」 「暫く外せないな〜彼奴が来たら取っても良いけど」 首輪に、手錠、足枷。拘束器具でベッドに固定されている。彼は恍惚とした表情で、私を見つめる。 「彼奴が来るまで…、ゆっくり待とうか…」 彼が私に覆いかぶさり、頬をツウっとなぞる。先生の時はドキドキしたのに、この人の時は気持ち悪く思う。顎が持ち上がり、顔が近づく。 「せ、んせ、たすけ、て」 バギ…!! 「瑠衣!!!」 「チッ、速すぎなんだけど…」 ドアを突き破り先生が、駆けてきた。 「っ!離れろ!!」 「っ!痛ったぁ…何すんの?」 すかさず先生は、彼にナイフを投げると、避けられて頬だけを掠った。血で線をなぞっている。彼も銃を構え、先生に向かって発砲する。だが、1発も掠りはしなかった。両者とも、頭にナイフと銃口を突きつける。 「お前に彼女の純潔は奪わせない」 「お前で穢れるなら、俺が奪うよ」 「狙いは、篠宮か?」 「あぁ、そうだよ。ジジイは俺の獲物なの。もう殺ったけど」 「嫌な予感が当たりましたね。まさか、お前に会うなんて…」 「俺が嫌がらせで、態と一緒にしてやったの。有難いね〜。まぁ、此奴の目の前で、殺り合いは嫌だから今回は引くけど、」 「まぁ、良いでしょう。でも、」 「「必ずお前を殺る」」 じゃあね〜、と言って、彼は窓から出ていった。張り詰めた空気が、部屋に籠る。先生はスーツから、針金を出し首輪、手錠、足枷を外してくれた。そして、思い切り抱き締められる。 「瑠衣!!無事で…、良かった…!!!」 「先生、助けてくれて、ありがとうございます…」 そう言って、抱き締め返す。 「彼奴は…、蓮は…、"同業者"で…、僕の、弟。今度の獲物は瑠衣、貴女です。これから先、彼奴は付き纏ってくるでしょう。でも、貴女の純潔は、僕が奪わせない」 先生は、潤み掛かった声でそう言った。 その後、先生から姫抱っこ状態にされて、車に戻り、本拠地へ移動した。部屋に籠り、ベッドに潜る。先生が過去に、弟と何があったかは、解らない。でも、話されたら全てを受け入れよう。そう誓って眠りについた。
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