3滴目 先生の追憶編

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3滴目 先生の追憶編

カジノ潜入から1ヶ月。あれから大きな出来事もなく、月日が流れていく。私は自主練習と雑用に励み、夜野さんは回復して、自分の任務と私を手伝ってくれる。そして先生は副業の執筆活動。個々がただ、自分の仕事をして過ぎていく日々に、物足りなさを感じ始めている。 今日の雑用は書類庫の整理。丁度暇そうにしていた夜野さんを捕まえて、手伝ってもらっている。機密情報もある為、持ち出しは禁止。写真撮影も禁止。対策として、書類庫全体に5箇所防犯カメラが設置されている。怪しい動きをしていたら、即刻、首領執務室に入電するしくみ。恐ろしい…。まぁ、見る分には構わないので(というか、先生から整理するように言われたので)心置き無く出来る。 「この書類は、ここに…っと…」 「これは何処のだ?」 「あぁ、それはここにファイリングして置いて下さい」 「解った」 そんな具合で作業はどんどん捗る。ファイリングも終わり始め、会話を交えながら作業していると、棚にある1つのファイルを見つけた。赤や、緑などの色では無く、一際目立つ黒色。手に取るとそれには、10年分程の書類が挟まっていて重い。開くと、 「何、これ…」 何処かの4人一家の家族写真は、両親と思われる人の顔が黒く塗り潰されている。切り取られた新聞紙には、血痕や零れた涙の跡。どれも、1つの事件に関わっている事のようだった。 「それ、真のファイルだよ」 「先生の、ファイル?」 「あぁ、彼奴が10年前から追ってる事件のファイルでな。それに、彼奴も関わってる」 「彼奴って、まさか…」 「紺野 蓮。真の実弟」 よく新聞を読むと、10年前、4人一家の両親が殺された。発見者は、この家の長男。次男も居るはずだが、行方不明。未だに未解決のままだそうだ。その、発見者が…、先生だった。 当時、15歳の高校生だった先生は目の前で、変わり果てた両親を見つけた。弟・蓮くんを探すも見つからず。でも、蓮くんはカジノ潜入の時、偽名を使い現れた。先生が、私を連れ去ったのが蓮くんだと気付いたと言う事は、事件後に何が起きたか解っていると言う事。 「気になるか?真の過去…」 「はい…でも、」 「お前になら、話すんじゃないか?」 「そうですかね…。夜野さんは、先生と10年も一緒にいるから信用されてると思いますけど、私はまだ…」 「俺はあの時、真の緊迫した顔、初めて見たけどな」 「え、」 「お前が、蓮にやられそうになった時、ピンマイクの音声聞いて、彼奴震えてたぞ。瑠衣が危ないって、俺に理由言わないで、車から飛び出してったんだ。それくらい大事なんじゃねぇの?瑠衣の事が」 「っ……!」 「彼奴の過去を聞いて、どう思うかは解らない。真の全てを受け入れるなら、自分で聞きに行け。瑠衣」 真面目な夜野さんの目に見つめられ、私のあやふやな覚悟が決まった。 「行きます…。全部、受け入れます…!先生の事」 「…行ってこい、あとはやっとくから」 夜野さんに、頭をポンっとされて、書類庫を出る。 先生の過去は、血腥い物だと思う。それでも、私は受け入れる。貴方の力になりたいから。 コンコン…
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