7.選択

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「どういうことあるね! どいつもこいつも、つながらないよ!」  地上60階のオフイスに怒鳴り声が響いた。それでも怒りは収まらず、華僑のボスは携帯電話を床に投げ捨てた。 「またですか、ボス」  電話を拾い上げた髭面の男は、ボスが最も信頼している側近のひとりだ。 「そうよ! どうなってるの? 国内の殺し屋の誰とも連絡が取れないなんて!」  裏社会の元締めである彼の地位を狙う者は山ほどいる。彼は暗殺という最も効率の良い手段を使い、その芽を若いうちに積んできた。この用心深い性格があってこそ、ボスは今の地位に収まっている。 「あいつが悪いね! あの点穴の使い手が!」  ボスが手で合図を送ると、即座に部下がタバコに火を灯した。 「あいつは優秀な殺し屋だったわ……いつも完璧に仕事をこなしてくれたね。なのに、いきなり音信不通になった! それからよ! ほかの暗殺のプロにも仕事が頼めなくなったのは! 残ってるのはチンピラみたいな素人ばかりね! そういえば、あなたのお友だちはどうなったの?」  側近の男はばつが悪そうに咳払いをした。 「私の身内の暗殺屋にコンタクトを取ったのですが、そいつは転職しておりました」 「転職?」  固まったボスの指の間から、タバコの灰が落ちた。 「今は飯店のコックでして……殺しからは完全に足を洗ったと断られました。なんでもある凄腕の男が、プロの暗殺者たちを次々と殺しているらしいんです。あの著名な李静(リー・ジン)王敏(ワン・ミン)ですら、そいつに消されたようです。噂を聞いた他のプロたちはみな怖気づいて、次々と引退しているとか」 「殺しのプロが簡単に殺されてどうするね! あなた、その凄腕を雇うことはできないの!?」 「残念ですが……」 「むむむ……」  華僑のボスは唸った。このままでは清廉潔白な手法でビジネスをするしかない。裏の手を駆使して成り上がってきた男にとって、厳しい勝負になることは想像に耐えない。  脂汗を拭うボスの脳裏に、かつて(ほふ)ったあの占い師の予言が浮かんだ。 (あなたがした選択があなたを殺すでしょう。それはひとりの男と少女によって完了(ワォン・チェン)します) (殺しの人     おわり)
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