39人が本棚に入れています
本棚に追加
モブにしては存在感のありすぎる顔立ち。
しかし、派手すぎない身なりから、
裕翔は思った。
資料にもジクスの記憶にもないこの少年は…
この作品の主人公であることに。
あえてプレイヤーの想像を増幅させるために、わざと主人公の絵を出さないゲームも多い。
これもその一つだ。主人公が男なだけあって、設定も難しかったらしく、プレイヤーへの想像力が試されるゲームでもあった。
だが、その分外見を各々の好みにできる特権があるゲームのようだ。
しかし、こうも情報量が逆に少ないと不安で仕方がない。
主人公の父親らしき貴族が帽子を脱ぎ、話を始める。
「ご挨拶遅くなり申し訳ございません。先程到着致しましたので、一目見るだけでもと思いまして。」
裕翔は驚いた。
わざわざ挨拶のためだけに、この会場に来る貴族がいることに対してだ。
ほかの貴族は、食事やダンスがしたくて、ほとんどがそれが目的な貴族ばかりいると思っていたからだ。
「こちらが私の息子 アレス・ヘンリーでございます。」
恥ずかしがりながらも、もぞもぞとお辞儀をする。
「は、初めまして王女様。アレス・ヘンリーと申しますぅ…」
その初々しさに少し微笑み頷く裕翔。
それほどの魅力がアレスにあることを痛感させられる。
さすがは主人公。
軽く会釈をし、帰る2人を見送った。
会場の清掃が終わり、馬車に乗った。
気慣れていないドレスを着て過ごしたため、
ドレスに着られている状態になっていた。
向かいにはレオンが座っているが、こちらをむく気配はなく、ずっと外を眺めていた。
その目は少し疲れているように見えた。
恐る恐る声をかけた。
最初のコメントを投稿しよう!