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翌日は朝から忙しかった。
王女や王子は10歳で世間に顔を出して良いとされる謎の決まりがあり、まだ誕生日を迎えていないジクスは世間に顔を知られていなかったため、ダイアナとして生きることに支障はなかった。
ダイアナとしての一日が始まった。
気慣れていないドレスを着て、伸ばしていた髪を結い、パーティに出席した。
ジクスは風邪のため欠席とされた。
パーティには多くの貴族が、参加した。
城からほとんど出なかったダイアナは仲の良い友達もおらず、ここで作るという形が当たり前だった。
既に11歳の誕生日を迎えた兄は貴族の学校に通っている。
10歳を迎えるまでは、特定の教師を城に招き入れ、教育を施す形だった。
その兄は途中から参加するということだった。
ダイアナのことは知らされているらしい。
色々な貴族が裕翔に挨拶をしに来る。
「初めまして王女様。私は…」
終わらない自己紹介を愛想笑いで流すように聞いていた。
周りには美味しそうなケーキがずらりと並んでいたが、それどころではなかった。
名前だけ注意して聞いていたが、どれもゲームの資料に載っていないモブだらけだったからだ。
特に気にする必要も無いと判断し、受け流していた。
しばらく経った時、入口から軍服らしき白い服を着た少年が入ってきた。
身なりは上等なもので、顔も整っており、会場にいた貴族たちを魅了していた。その顔は記憶にあり、すぐに立ち上がり、お辞儀をした。勿論、ダイアナとして。
「お帰りなさい。お兄様。」
「…」
至って冷静にお辞儀はしたものの。
弟が姉の振りをしている光景を見たら普通戸惑うだろう。
恐る恐る顔を上げると、真顔のままの兄レオンがこちらを見ていた。
しばらく黙ったままだったが、
近くの執事に上着を渡し、何気ない顔をして、近くの飲み物が入ったグラスを2つ取った。
1つを裕翔に渡した。
意味がわからず戸惑いながら受け取ると、少し張った声で、
「誕生日おめでとう。ダイアナ。」
そう言うと、持っていたグラスを裕翔のグラスに軽く触れさせた。
入っていた飲み物を少し飲み、会場の人混みに紛れ込んで行った。
予想していなかったレオンの行動に少し戸惑った。
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