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冷やかしでも茶化しでもなく、冷静な姿は、11歳とは思えない振る舞いだった。
テーブルに置いてあったグラスが空になっていたことに気づき、飲み物を持ってきてくれたのも気遣いのひとつだろう。
現代に入れば、仕事が出来るモテ男ポジションだろうと謎の分析をする。
レオンが見た目だけでは無いことが重々に分かる行動だった。
その後は大分落ち着き、ゆっくりパーティを楽しむことが出来た。
それからはダンスパーティが始まったが、ダンスの仕方など、資料やジクスの記憶にもなかった。
なので、見たいからと、誘いを断った。優雅なクラシックの曲が会場に響き渡り、皆笑顔で踊っていた。
レオンが空のグラスを持ったまま裕翔の隣に来た。
小声で、誰にも聞こえないように問いかける。
「ダイアナのことは残念だったな。元々病気にはかかりやすい体だったが、まさか私がいない時に…」
その顔は一見、何も考えていない無表情に見えるが、その目には確かに、悔しさと怒り、多くの感情が渦巻いているように感じられた。
本当にダイアナを愛しているのがわかった。
しかし、冷徹な目が裕翔に向けられた。
「私はダイアナに関しては残念だったと思うが。まだ、お前の件に対しては納得していない。」
そう言われるのも無理はない。
レオンはダイアナを心の底から愛していた。
相当のシスコンである。
しかし、11歳になり、ダイアナと過ごす時間は次第に短くなり、
ジクスがダイアナと遊んでいることを僻んでいた。
冷静な王族というレオンの印象からは想像できないだろう。
しかも、大切なダイアナに別れの言葉を伝えることも出来なかった。
恨んで当然だと、裕翔は思った。
レオンの資料にも、昔はダイアナを可愛がっていたが、今はその優しさは消え失せてしまっている。
という意味深な説明まで書かれていた。
しかも、マーカーで何重にも引かれている。
そんなに重要なことだろうかと、疑ったが、引かれた線の意味も分からず、諦めた。
そうこうしているうちに、パーティはお開きになった。
会場の片付けが一斉に行われる。
腹を満たした貴族たちは、裕翔もといダイアナに別れの挨拶をするため長蛇の列を作った。
やっと最後の人になったところで、
裕翔は驚いた。
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