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「松永君!どうにかしろよ。みんな迷惑だと思っている。こんな騒がしい中では作れないじゃないか」 案の定、豊岡が言い出した。みんなはあからさまに同調はしないが、集中できないのは確かだ。 「わかったよ。しばらくここには来ないよ」 俺は紙に『松永は当分不在』と書いて表のドアに貼っておいた。 「松永!待って」 ミッキーが追いかけてきた。 「ねえ、事務所に聞いてさ、誰が貼ったのか 防犯カメラ見せてもらおうよ」 「ええ?いいよ別に。犯人が分かったところで噂はもう一人歩きしてるしさ。人形が好きなのは事実だし」 「だって、作業できないじゃない」 「実習室じゃなくてもどこか使えるとこないか探してみるよ」 「あ、ねえ、じゃあ私と付き合っていることにしようよ」 「へ?」 「生身の人間と付き合ってるって分かればさ、噂もすぐ消えるよ」 「いや、えっと」 「私なら全然問題ないから。彼氏もいないし。松永の役に立ちたいし」 最近、俺の役に立ちたい病が流行っているのだろうか?あ、病気って言ったら失礼だよな。ありがたいことだ。 「いや、別に噂もほっとけばいいから。ミッキーに迷惑かけれないし。俺も特に問題ないから気にしないで」 俺の言葉にミッキーは涙目で睨みかえして来た。 「え?」 「もう!いい!」 ミッキーは走り去った。え?なに?どういうこと?なんだかモヤモヤの残る後味の悪さ。
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