6.

4/6
前へ
/77ページ
次へ
 俺は救いを求めるべく、アトリエ・ジローへ向かった。今日は教室はないから作業の続きが出来る。教室には誰もいなかった。 事務室の電気がついているから速川さんはいる。ジロー先生は個人工房にいるのだろう。 俺は原型の粘土を取り出そうとして、棚にチラシが置かれているのに気がついた。それにはスタッフ募集の文言が……。『造形の基礎のある美大生大歓迎』とあった。   え?俺、切られるの?ジロー先生から駄目だし受けて、まだOKをもらえていないのは確かだが、そんなにすぐクビになるのだろうか? 「あ、あれ?松永来てたのか。ちょうどいい。ちょっと話があるんだが」 速川さんが事務所から出て来た。十中八九、クビ宣告?俺は生唾を飲んだ。 「スタッフのことなんだけど」 速川さんがなんとなく言いにくそうに口火を切る。居たたまれない。 「このチラシですか?」 「あ、見た?それ、まだ試し刷りなんだけど」 うーわー、そうなんだ。やっぱり。 「えっと、ジロー先生と話せますか?」 直談判で食い下がってやる。 「ジロー?ジローは今日、燿子さんとギャラリーに打ち合わせに行ってるが」 「明日は話せますか?」 「明日は専門学校で講義が入っている。なんか急ぎか?珍しいな」 えー、ひどいな。急ぎもなにも、戦力外通告する気なんでしょ?その前にジロー先生と話したい。
/77ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加