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俺は救いを求めるべく、アトリエ・ジローへ向かった。今日は教室はないから作業の続きが出来る。教室には誰もいなかった。
事務室の電気がついているから速川さんはいる。ジロー先生は個人工房にいるのだろう。
俺は原型の粘土を取り出そうとして、棚にチラシが置かれているのに気がついた。それにはスタッフ募集の文言が……。『造形の基礎のある美大生大歓迎』とあった。
え?俺、切られるの?ジロー先生から駄目だし受けて、まだOKをもらえていないのは確かだが、そんなにすぐクビになるのだろうか?
「あ、あれ?松永来てたのか。ちょうどいい。ちょっと話があるんだが」
速川さんが事務所から出て来た。十中八九、クビ宣告?俺は生唾を飲んだ。
「スタッフのことなんだけど」
速川さんがなんとなく言いにくそうに口火を切る。居たたまれない。
「このチラシですか?」
「あ、見た?それ、まだ試し刷りなんだけど」
うーわー、そうなんだ。やっぱり。
「えっと、ジロー先生と話せますか?」
直談判で食い下がってやる。
「ジロー?ジローは今日、燿子さんとギャラリーに打ち合わせに行ってるが」
「明日は話せますか?」
「明日は専門学校で講義が入っている。なんか急ぎか?珍しいな」
えー、ひどいな。急ぎもなにも、戦力外通告する気なんでしょ?その前にジロー先生と話したい。
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