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「コケティッシュ……。あの075号が先生のコケティッシュのイメージなんだ……」
どうりで俺のが健康的だと駄目だしされるはずだ。あの075号は妖艶で儚げで本当に美しいと思った。
「あれ?でも、あれって売れてしまいましたよね。良かったんですか?手元に置いておかなくて」
「僕はコレクターじゃない。作家だ。気に入って買ってもらえることは光栄だし、手元にあれば、あれ以上のものは作れなくなる。出来上がった作品には執着しない。作っている最中が絶頂だ」
「俺はまだ、そんな絶頂感を味わったことないです。作るのは楽しいけど」
「松永は自分の主題に出会っていないだけだ。そのうち分かるよ。と、言っても、分かったと思ったらまた分からなくなるの繰り返しだけどね」
「……でも、それじゃあ、良い作品ができない」
「毎回絶頂の作品が出来ればそれは素晴らしいが、そんなことは皆無だ。秀作が幾つもあって、傑作が生まれる」
「俺、最近手からのイメージが分からなくなっていて。粘土原型もなんか違うって、でも形が決まらなくての繰り返しで」
「へー、それはいい傾向だ」
「え?どうしてですが?前は先生に言われた形がすっと決まってたのに」
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