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店の中は深みのある色の木とアイアン制の黒いスツールで統一されていて、お洒落で落ち着く。金曜の夜だからか、ほぼ満席。カウンターの奥と手前が2人席ずつ空いている。
「とりあえず座って、開いたら四人席に移してくれるって」
先輩お姉さんは仕事もテキパキできるのが伺える行動力。奥に先輩お姉さんと長沢が、間四席空けての手前の席に俺と後輩女子が座った。殆ど何を話しているかは聞こえない。
こういう場では、俺と長沢の中で、ジロー先生のとこで働いているのは言わないことにしている。変にミーハーになられても困るからだ。
ジロー先生は結構有名だし、フランス人と日本人との間に生まれている超絶美形。四十歳になってもそれは衰えていない。むしろ色気は増している。今は燿子さん一筋なのを公言しているし、態度もそうだけど、モテることに違いはない。あんな美形を前にしたら、俺らは霞んでしまう。なので、ただの美大生ということにしてる。
「名前、教えて?」
首を少し傾けて話す後輩女子。
「松永洋海」
「洋海くん!いい名前ね!」
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