1stプロポーズ

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1stプロポーズ

涙は、永遠の別れの悲しみをわずかに和らげてくれる。 流せば、悲哀にくれる人に少し前に向く力をくれる。 そして『サヨナラ』は今を生きる、この世の人に言う言葉。 満たされた時間を一緒に過ごした相手に言う、決別の言葉。 あの頃、私達家族は互いに『サヨナラ』を言い合ってしまった。結果、恵海お姉ちゃんも惣一郎お兄ちゃんも家から出て行った。淳也叔父さんのせいでお母さんがいる家に一切寄り付かなくなってしまった。 末っ子の近況が心配なのか、私が働いている店に二人共ちょくちょく来る。 目当ては私? いや、真一さんの料理かも知れない!? 会う度に輝いている姉は、公私共に充実しているのだろう。 逆に惣一郎お兄ちゃんは段々陰気になっている。実家に居た時からずっと『先輩がこうした、センパイがああした』とリスペクトする学校の先輩ネタで煩かったのに、最近聞かない。 真面目でノンビリ屋の坊っちゃんっぽかった面影は薄れ、その都度違うメイクをして現れるせいか、あやしい人みたい。 でも兄が先輩の置き忘れた電子辞書を、今も大事に持っていることを私は知っている。 お母さんは…お父さんが亡くなってから木偶人形みたいになってしまった。 それもこれも叔父さんのせい!!
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