1stプロポーズ

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私はゆっくり味わって食べると、店に引き返した。sun&moonと店名が書いてある隣に目当てのモノが貼ってあった。ピーク時が過ぎたせいか、さっきの男性店員が眠そうに立っていた。 「あの、すみません」 「はい、いらっしゃいませ」 店員さんは今にも閉じそうだった目蓋を開けて、私に相対する。 「さっき頂いた日替わり弁当、凄く美味しかったです!」 私の感動を伝えたいのに言葉が足りない。 「有り難うございます」 嬉しそうに破顔する店員さん。 「…あの、アルバイトまだ募集してます?」 「してます!してます!直ぐ来て下さい!」 スゴい食い気味に言う彼に、今度は私の方が笑った。 真一さんに後で聞いたら、あの時はアルバイトが辞め手伝ってくれていた妹さんも悪阻で人手が足りなく、ほぼ真一さん一人で店を切り盛りして睡眠不足も甚だしかったそうだ。 翌日から私は、毎朝登校前に昼のお弁当の仕込みを、下校後に夕方のお弁当販売準備を手伝った。 『高3だろ?勉強は?そんな働かなくても…』 と心配する真一さんに、料理人になりたいので是非ガッツリ働かせて下さい!と頼み込んだ。 私が提供する料理を食べる人が癒される空間を持ちたいと、将来の夢が決まったのだから。 そうやって二週間経った頃、約三年ぶりに聖夜さんと再会した。
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