1stプロポーズ

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「…」 段々僕は彼女の無言に焦ってきた。 その時奥から 「あずきちゃ〜ん、終わった?」 と張りのある男の声がした。 「はーい、今撤収中でーす!」 「了~解」 彼女は置き看板を手に取った。 「重要な話です」 僕が強い口調でそう言うと、彼女は看板を持ったまま大袈裟に溜息をつき 「明日は学校がお休みだから昼から仕事に入ります。その前に少しなら」 「有難うございます。じゃ10時にそこの公園出入り口で」 「分かりました。私の方も聞きたい事があったし丁度良い、カタをつけましょう」 そう言って去っていく姿を見送りながら、彼女の口ぶりからまるで決闘前夜みたいだと思った。 翌朝僕は早めに目が覚めた。 清潔感のあるラフな格好を選択し、待ち合わせ時間より前に着くよう家を出た。 この時期の草木は賑やかだ。我が世の春を競うみたいに花々が咲き誇っている。 公園内の桜は青々しい葉をつけ、代わりに白やピンク色の可愛らしい花をつけた木を沢山見かけた。その足下にはツツジが咲いている。 彼女を待ってる間、何の木かと検索した。 ああ…なるほど。 僕が情報を読み耽っていると、 「…おはようございます」 10代の女性らしいカジュアルな服装の彼女が無愛想に声をかけてきた。 「おはようございます。天気が良いいから、そこに座りませんか?」 片手で携帯をしまいながら、公園の出入り口近くに点々と置かれた一人用の腰掛石を指さした。彼女は無言でさっさと座り、僕を無視して鮮やかな花々の方を見ている。 仕方ない。 彼女の視線の真向かいにくるよう屈んだ。まず先に言わなければならないことがある。ズボンの膝に地面の土がつくのも構わない。 「なっ!?何ですか?恥ずかしい!」
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