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片膝をついた僕を見て、怒った様な戸惑った様な表情の彼女の瞳を捉えた。
「だいぶ遅くなりましたが、お父様のことお悔やみ申し上げます」
「…」
「葬儀には参列したかったのですが、家族葬だと伺ったので」
「‥別に来て頂く義理もないし」
と彼女は目線を外した。僕は土を軽く払い彼女の隣の石に座った。
「駆けつけて悲嘆に暮れる貴女を慰めても、逆効果だったでしょうね多分」
「よく分かってるじゃないですか!ところで重要な話って何ですか!?」
「それより、あずきさんの聞きたい事って何です?」
よくぞ聞いてくれましたとばかり彼女は体を僕の方へ向け、
「何で私なんです!?最初貴方のお見合い相手はお姉ちゃ、姉でしたよね?」
彼女は幼く見えないようにか言葉を整えながら、勢いこんで質問してきた。僕は内心クスリと笑う。
「はい、そうでしたね」
「姉の都合で破談になって、代わりに私をって父が言ったみたいですけど、それも貴方が家に来る前に立ち消えてましたよね?」
一つ一つ確認するみたいに強調する彼女は、見ていて微笑ましい。
「ええ」
「じゃ何故あの日私に会いに来たんです?今もどうして私の素行を調べてるんです?気持ち悪い…」
「失礼な。言ったじゃないですか『僕は貴女が良かった』と」
「はあ?あなた視力計り直したら?お姉ちゃんに比べて容姿が劣る私に会う意味が分からない!」
それと似た事を何度伯父に言われたことか。
「劣るとか言わないで下さい。好みの問題です」
僕がきっぱり言うと、
「変わってる…変な趣味」
と少し紅潮した頬を隠すみたいに、彼女は又体の向きを変えた。
「大きなお世話です」
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