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美人の姉の待ち伏せは、今まで一杯いた。なので、
「恵海お姉ちゃんにラブレター?」
「違います」
私服だが、
「惣一郎お兄ちゃんの学校の友達?」
「いえ」
「じゃあ誰に用?」
若干不審に思い始め眉をひそめる私を見据えて、彼は明瞭な口調で
「貴女に、楠瀬あずきさんに」
家に来る年頃の異性は兄の友達くらいだ。こんな人知らない。
「えっ、あなた誰?何の用ですか?」
帰宅後のおやつを早く食べたくて、多少ぶっきらぼうに返事をした。
「美園聖夜と言います。淳也伯父さんから僕のこと聞いてませんか?」
「あっ!いえ…」
『美園』ってことは叔父さんの親戚!?
私は思いっきり驚き、改めて長身の彼の頭の先からつま先までを見た。言われて見れば似てる。淳也叔父さんが眼鏡をかけ若くした感じ。
「ご両親からも?」
「…すみません、何も」
「困ったな」
段々申し訳なくなってくる。
この頃家中が皆ピリピリしている。だけど、
『未だあずきは幼いから』
『あずきは食べ物以外ボッーとしているからな』
と誰も私に大事な話をしてくれない。完璧みそっかす扱いだ。
つい先頃も姉のお見合いの件で両親が話し合っていた。大学も卒業してないのに早いんじゃないって私がお母さんに言ったら、
『あずきには関係ないから部屋に行きなさい』
と追い払われた。その後お姉ちゃんに結婚前提で付き合ってる人がいるのが発覚して、上に下にの大騒ぎだった。
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