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「ふふっ」
「何ですか、いきなり」
道に出していた看板を片付けてる最中、初対面の彼を思い出し忍び笑いをする私に、手持ち無沙汰に立っていた聖夜さんが首を傾げる。
「初めて会った時を思い出して。あの時顔を赤らめてたイブは可愛かったな〜と」
彼は憮然とした表情で
「その呼び方は止めて下さいと頼んでるのに。それに何ですか男に可愛いって」
持っていた看板ごと私は彼に向き合い
「だってイブって呼び名の方が親しみ持てるもん。今じゃいつも偉そうな態度か仏頂面ばかりでさ~」
「ここに住むのを止めて私と暮らせば良いんです。そうしたらいつも笑顔になります」
私と顔を合わせる度に微笑んでる彼を想像する…
「キモいー」
「失礼な。ところで大体片付けたら一緒に夕飯食べませんか?」
と聖夜さんはクローズした庭カフェの屋外席に目をやる。時折受けるお誘いだが今夜は、
「ごめんなさい、今夜は真一さんいないから明日の仕込み私がしないといけないの」
私が軽く頭を下げ断ると、
「…全く、婚約者が他の男と一緒に同じ屋根の下で暮らしてるだけでも許し難いのに、いいように使われてしまって」
あまりの彼の言い種に
「だから〜言い方!いいようにって私、住み込みだし。イブだって店長の料理好きでしょ?それに婚約の件はイブが勝手に言ってるだけで…」
異を唱えたものの、最後は彼の視線に蹴落とされモゴモゴと口淀んだ。
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