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父が作る料理は、意表をついた調理法で食材をアレンジする。
私が材料の組み合わせや隠し味を当てると、父は嬉しそうに誉めてくれた。母が作る家庭の食卓とは全く違う、非日常のワクワク感がする料理だった。
幸せな頃の記憶と連結した父の味、私は勉強そっちのけでそれを求めた。アルバイトをし自分で作る食材の購入や外食に費やした。
当時色々あり、私の高校の学費は淳也叔父さんが出していた。兄は大学費用を負担するという叔父の申し出を断って、家から出ていた。
父を思えば私も同様にしたかったが、
『高校の間は家にいて卒業して』
という母の必死の説得に応じた。
そんなグルグル渦巻くやるせない怒りや不安、悲しい気持ちをリフレッシュしようと、池が有名な公園に向かった。道すがらにお弁当を買い水辺で食べようと思っていた。
ランチ時人だかりが出来ているのを見て、美味しい店だと察する。お弁当が置いてある簡易カウンターの後ろを覗けば、普通の民家を改装したカフェだった。縁側と庭に設置したテーブル席で樹木や草花を愛でる、素敵なコンセプト!
残念な事に庭カフェに手が回らないみたいでクローズ。テイクアウト弁当を売っている男性はくたびれていた。
日替わり弁当を買い、いざ池の畔のベンチで中身を広げて見ると、その彩りに驚いた。
人参と油揚げ、切干大根を混ぜた酢飯に、茄子とピーマンの素揚げやプチトマトが色を添え、メインはとり挽き肉の団子3種。一口ずつ食べてみた。
美味しい!
とり団子は、うずらの卵の半熟を中に入れたつくね、梅干しで味付けし大葉でくるんだもの、柚子の皮のみじん切りがふんだんに入った柚子胡椒味だった。
どれも丁度良い味加減。お弁当にありがちな濃い味じゃない。そして金額の割に手がこんでる!
たかが弁当、されど弁当。
空腹を満たすだけでなく、食べる人がお弁当を開けた時少しでもトキメク様に、色々な味で次の活力になる様に考えられてると思った。
愛がある!
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