ほとんどの外側

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 あの日は朝からだるさが抜けず、熱っぽい感じが確かにあった。左わき腹の皮下脂肪に包まれたその先にはなんとなくの違和感があり、嫌な予感ばかりが膨らんでいく。  店長にも心配されてパートは早退させてもらった。家に無事にたどり着けたのは幸運だったと思うべきか、不運の始まりと見做すべきか。  母の顔を見たことはかろうじて思い出せる。ただし、今とつながる場面ではない。  私の目には白い天井が映っていた。左右にはカーテンが垂れ下がり、少しばかり狭苦しい感じがする。匂いが私の部屋と違った。自宅のどの部屋のものともだ。ただ全く知らないものでもなかった。ついこの間までよく嗅いでいたものだった。  あぁ、思わず私は嘆息した。身体はとにかく怠く重い。 「芳賀さん、気分はどうですか?」  細マッチョを思わせる男性看護師が母をともない現れた。遅れてやってきた見覚えのある若い医師に薄々気づいていた事の次第を聞かされた。
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