第5の冒険 『私は天使計画』発動。

3/12
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
第5の冒険 『私は天使計画』発動。③  理科室を出た僕と日向(ひむかい)美沙(みさ)は、合唱部が練習をしている音楽室に向かった。  音楽室の後ろのドア越しに天ノ使(あまのつかい)美加(みか)の姿を探した。  日向美沙は、指を刺して小声で言った。 「前列の右から5番目の人です。長髪を後ろで()んでいます」  当然ながら、後姿なのでどういう顔かも表情など分からないが、普通の女子高生という印象だった。  オーラでも出て(かがや)いているかとも思ったが、そんなわけないか。  僕は、ゆっくり音楽室の窓に沿って廊下(ろうか)を歩いた。    そして、教室の前方で振り返って天ノ使美加を見た。  目鼻立(めはなだ)ちの(ととの)ったモデルタイプの美人だった。  彼女が天使か……。  僕は、そのまま音楽室を後にした。しばらくして日向美沙が僕を追って来た。 「先輩美加ちゃんをちゃんと見ましたか? 美人でしょ」 「そうだね。歌の練習をしている所だから、その行動から性格的(せいかくてき)なものは分からなかったけど、印象はつかめたよ。  次は、恵留(える)さんのほうだね。双子(ふたご)だからそっくりなんだろ」 「もちろんです。私なんか幼稚園からの付き合いですが、いまだに見分けがつかないことが良くあります。  恵留ちゃんは、バスケ部だから体育館です」 「じゃあ、次は体育館に行ってみよう」 「了解しました」  何か、日向美沙が僕の助手っぽく振舞(ふるま)いだした。まあ、別にいいけど。  体育館では、バスケ部、バレー部、卓球部などの男女が汗して練習をしていた。  僕らは、体育館の(すみ)からバスケ部の女子部員の中に天ノ使恵留を探した。    美加と恵留は一卵性の双子だから、美加と似た部員を探せばいいわけなんだが……。 「日向さん、わかるか? 恵留さんはどこだよ」 「ええ。あの。私もよく見てるんですが、どうもいないみたいですね……トイレかな?  友だちが今休憩しているみたいなので私聞いてきます」  そう言うと日向美沙は、バスケ部の練習しているコートの壁際(かべぎわ)で座っている部員の所に行った。しばらく2人で話していたが、やがて日向美沙はこちらに戻って来た。 「先輩、恵留ちゃんは、いません。今日は休んでいたそうです。同じクラスの子が言っていました。  高校に入っても学校に来たり、来なかったりだそうです」 「そうなんだ。わざわざ聞いてくれてありがとう」 「いえ。美加ちゃんを助けるためなら何でもしますよ。やることがあったらどんどん行ってください」 「あ、ああ。その美加さんを、本当に助けるってどういうことなんだろうなあ。  別に何かの生贄(いけにえ)にされるわけでもなし。  本人は天使になりたいんだろ。  本人がやりたいことを止めていいものかどうかなあ……」 「先輩、私が心配しているのは、美加ちゃんが天使になるってことじゃないんです。  そのあとの天に帰るってところです。  わたしも天使になるんならどうぞって思ってます。  でも、天に帰っていくってどういうことでしょう。  それがわかっていればこちらも対処(たいしょ)仕方(しかた)があるんですが」 「あと、美加さんのお母さんが心配していないってことがひっかかるんだよなあ。  そこも不思議(ふしぎ)だよなあ。  君が思うような心配するようなことは起こらないんじゃないか。  復活祭(ふっかつさい)に何か、特別な儀式(ぎしき)みたいなものをするだけなんじゃないかな」 「そう……ですよね。美加ちゃんも元気だし、美加ちゃんのお母さんも何も心配していないし。恵留ちゃんは、この件をけっこう()(はな)しているし。  わかりました。とにかく明後日を待ちます。何かあればすぐ先輩に連絡していいですか? 」 「うん。べつに(かま)わないよ。面倒(めんどう)くさいのはごめんだけどね。 何が起こるか楽しみだよね、ぐらいの気持ちで行かないと気分が落ち込んじゃうよ」 「はい。わかりました。七海先輩、今日はいろいろとありがとうございました。」  そう言って日向美沙は頭を下げた。 「いやあ、お礼を言われても何もしてないし。明日は土曜日で休みだし、ゆっくりして。明後日またあおう。  そうだな、分かりやすいから学校の正門にしようか。  部活の練習なんかやってるから、学校も()いてて、人もいて安心だ」 「はい。では、七海先輩失礼します」  日向美沙は、帰るために靴箱(くつばこ)に向かって行った。  僕は、ノートに書いたことを再度見渡した。 『明後日、天使になって天に行く天ノ使(あまのつかい)美加(みか)』 『それを肯定する天ノ使(あまのつかい)恵留(える)』 『すべてをうけいれている母、天ノ使(あまのつかい)摩耶(まや)』  母親の天ノ使摩耶は、天使に関してのカリスマスピリチュアリストとして知られている。  もし、もしもだが、本当に天ノ使美加が天使になって天へ行ったら、天ノ使摩耶の知名度およびカリスマ度はさらに上がるだろう。  しかし、人が1人いなくなるってことだから、事件になるよな。警察のご登場だよな。  いったい何が起ころうとしてるんだろう?  つづく
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!