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さすがに少し反省していたら。
急に、クスっと笑われて。
「――――……? なに?」
このタイミングで、なんで、笑う?
そう聞いたら。
「……ちょっと、悪かったと、思ってる?」
「――――……まあ」
そう答えると、そいつは、何だかすごく、穏やかに、柔らかく、ふふ、と微笑んだ。
「……お前、名前、なに?」
「……優月。優しいに月って書く」
「優月、か。――――……オレ、玲央でいいよ」
「れお…」
唱えるみたいに、オレの名前を口にしてる優月を、じっと見つめる。
「……なあ、優月」
「……?」
見上げてきた優月に。
「――――……もっかい、キスする?」
「……?」
「……ファーストキス。ちゃんとやりなおす?」
「――――……」
してしまったものは、もうどうにもできない。
けど、嫌じゃないなら。
ちゃんとキス、しなおすのもありかなと思って、聞いてみた。
優月は、じ、とオレの顔を見つめていたけれど。
不意に、ふ、と、瞳が緩んで、くすっと笑う。
なんかオレ――――……
こいつの、この笑い方――――……
なんか……見ていたい、かも――――……。
「……別に、いい。やり直さなくて」
「ん?」
「……やじゃなかったから、殴んなかったし」
「――――……嫌だったら、殴ったの?」
「……当たり前じゃん」
――――…意外。 …嫌だったなら、殴ったんだ。
そう思うと、思わず笑ってしまった。
「――――……じゃ、やり直さなくていっか」
「うん……でも」
「……でも?」
「……玲央とキスは……したい気がする」
「――――……ふうん?」
キスしたい、なんて。
言うんだ。
――――…さっきのが、初めてだった奴が。
ふーん…。面白い。
なんか、ますます。
――――……興味深い、というか。
何なんだろう、これは。
見つめてると、優月は何も答えず、じっと見つめてくるだけで。
「……オレとしたいの、キスだけ?」
そう聞くと、優月は、瞬きを繰り返して。
かあっと、また赤くなる。
肌が白いから、赤くなると――――…目立つ。
と、その時。
急にポケットのスマホが震えた。
あ。やべ。
そうだ。練習遅刻しそうだからって、車で送ってもらったんだから……
もう完全に遅刻だ。
無視するわけにもいかず、スマホを見ると、案の定、バンドのメンバーから。
「もしもし――――……」
「玲央、いまどこだよ、15分遅刻だよ!」
「……ああ、つか、もう着いてんだけど……ちょっと途中で……」
「いーから早く来て」
「…分かった、今から行くって」
それだけ言うと、電話を切る。
じっと見つめてくる優月に、視線を向けて。
「バンド仲間から呼び出し。練習だから、行かねえと……」
「あ……うん」
なんか色々話がつくまで、ここに居たかったけど。
「…優月。キスしても、いい?」
ぐい、と引き寄せて、返答を待っていると。
息を飲んだみたいに、優月は黙って。
それから、しばらくして、うん、と頷いた。
(2021/3/23)
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