うちに招き猫がいます

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 二週間という長めの出張を終え、真っ直ぐ帰宅した優はオートロック前でもエレベーターの中でも足踏みしながら早歩きで玄関ドアへ向かう。 「ただいま香里!」  おかえりなさい、とスリッパを鳴らして香里が出迎える。 「よかったわ、無事で」 「ああ」  大げさだ、と笑いながらキャリーを三和土(たたき)に置く。いつも通りビジネスバッグとコートを預けリビングに入れば、優はなんだとため息をついた。 「いるじゃないか猫ちゃん」  香里に話すとき、招き猫の呼称は猫ちゃんに統一されている。 「それが、今日戻ってきたの」 「今日?」  ええ、と香里が頷く。 「確か夕方頃だったかしら。本当よ」  気を引くために嘘をつくような性格ではない。(うつむ)いて不安がる香里に「香里を疑ったりしてないよ」と告げて優はテレビ前のソファへ座る。  ――速報? 「新幹線止まっちゃったのよ」  速報帯で流れるテロップには優が乗った直後の新幹線が「突風による落下物で足止め」と繰り返されている。 「ちゃんと帰ってこられてよかったわ」  香里は笑顔で綻んだ。その表情に優はすっと背筋が凍る気持ちがした。 *
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