うちに招き猫がいます

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 優は香里のオカルト好きを個性だと捉えていた。しかし思い返せば、香里と出会う少し前から妙なことが起きすぎる。  ――香里を紹介してくれた太樹だってそうだ、なんで招き猫なんか気になったのだ。  ひとつ気になり始めると芋づる式に記憶が釣れてくる。  ――毎日毎日きれいに拭いて。そりゃ招き猫は俺も可愛いけど、なにか裏があるんじゃ? 「最近お疲れのようね」  夕飯の皿を下げているところだった、と優ははっとした。 「仕事が忙しくて。いつも遅くなってごめん」 「いいえ、優さんのお身体が心配で」  ありがとう、と普段なら優は香里を抱きしめただろう。 「じゃあ、先に寝るよ」  下げた皿を水に浸すこともなく、優はさっさと布団に入った。 「本当にお仕事大変なのね」  残された香里は寝室に入る優を見届け呟いた。お皿を全部洗い終えた後に招き猫の前に座る。 「優さん……」  香里は招き猫に手を合わせる。その様子を優はこっそり後ろから眺めていた。  ――やはり何か念じている。  優の疑心は確信に変わりつつあった。 「あら、優さんどうしたの?」 「えっ?!」  顔を上げると、招き猫の水を下げた香里がにっこりこちらを向いていた。 「あ、いや……歯を、磨き忘れて」 「そうね、歯は大事だものね」  うふふ、と香里はおしとやかに笑った。
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