うちに招き猫がいます

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 香里を疑い、太樹を疑い、ついに招き猫まで疑い始めた優は翌日から休憩も取らずに仕事をし続けた。 「課長、課長?」  三十を目前にして課長。優は優秀な男だ。その優秀な課長が顔をしかめている。書類を持ってきた後輩はパソコンとにらみ合う優に心配して声をかけた。 「大丈夫ですか、顔色が‥‥」 「なに、大丈夫だ。どうした」 「坂本の退職に合わせた送別会について確認です」 「今日だったか、申し訳ないが少し遅れる。先に始めていてくれ」 「承知いたしました」  ぺこりと頭を下げて後輩は仕事へ戻った。 * 「課長、お先に失礼します」 「ああ」  最後の社員が出て行き、優だけがフロアに残っている。  この書類に目を通せば仕事が終わるという段階に差しかかったとき、優のスマホがピロリと鳴った。  ――香里だ。  相変わらず、香里は優の仕事中に連絡を入れることはなかった。見たくない気持ちもあるがそこは優しさの塊、無視はできなかった。  開いたメッセージは一行。 「謝りたいことがあるの」
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