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「課長、いまどちらですか?」
「私は家だ、妻といる。それより――」
「よかった、皆さん課長はご自宅にいるそうです!」
電話越しに、安堵の声が口々に聞こえる。
「どういうことだ?」
「え、課長ニュース見てないんですか? 大騒ぎですよ!」
優は香里に「テレビをつけてくれないか、ニュースだ」と頼む。香里がニュース番組にチャンネルを変えると、そこには見覚えのあるビルが映っている。
「これは……」
「どうしたの?」
「うちの会社だ」
「まあ大変」
香里は優のそばにより、きゅっとスーツの裾を掴む。
「引き続き現場からの情報です。都内の○○区△△商事ビル8階から黒煙が上がっております。現在通報を受けた消防隊が到着し消火と救助を行っている模様です――」
無機質なアナウンサーの声が伝えた出火元の8階は、先ほどまで優のいたフロアだった。
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