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翌日から優は寄り道をやめた。突然現れた招き猫がまだ部屋にいるか、気になって仕方ないからだ。
警察に相談しようにも盗んだと思われたらたまったものではないし、検索をかけても落とし主は見つからずじまい。優はしばらく様子をみることにした。
招き猫が現れて一週間後の夜、優は高校時代の仲間とリモート飲みを楽しんでいる。画面に映るのは真っ赤な三人の男達。背景がベッドというのも締まらないから、とカラーボックスを背にして優は話をしていた。
「マサ、ずっと気になってたんだけどそれなんだ?」
三人のうち唯一の既婚者が子どもの寝かしつけで先に落ちたとき、太樹が言った。
「ん? ああ、招き猫だよ」
「見りゃわかるさ。買ったのか?」
「うーん」
まいった、と優は頭を抱えた。
太樹はいいやつだがオカルト好きで有名だ。個人サイトも持っていて、界隈では有名人だという。雑誌にたびたびコラムも載せているから、部屋に突然招き猫が現れたなんて話をしたら絶対に見せろと言ってくるはず。
ブチッと通話を切ることもできたがそこは優しさの塊、優はしぶしぶ招き猫について話した。するとどうだろう、優の想像とは違い、太樹は顎に手を当てて真剣な顔をしている。
「マサ、それはチャンスだ」
「ちゃ……へ?」
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