うちに招き猫がいます

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「あんた、どんな人生送ってきたんだい」 「へ?」 「先生それはどういう意味ですか?」  新居へ引っ越してちょうど半年。そろそろ子どもがほしいからてもらいましょうという香里に付き添って、よく当たると噂の【新宿のオカン】に来たところだ。 「この星回りなら、あんたはとっくにこれだよ」  これだよ、と上を指差す。「まあ」と口元に手を当てる香里からお陀仏といった意味だろうと優は察した。 「でも手相では主人は長生きだって」 「手相? どれ」  新宿のオカンはぐいっと優の手をとり、ガラス棒のようなものでつつつと手のひらをなぞる。初めに書いた生年月日の紙をじっと見つめ、それから足元の本棚から分厚い辞書のような本をテーブルに出した。パラパラとめくるたびに細かい埃が舞い、ライトに照らされてキラキラ踊る。 「ご主人の周り、そうね、二年前かな。事件が多発しているはずだよ」 「あっ」  ――○△駅の東口で通り魔が  ――△△商店街でも不審者が出たって  おしゃべりな女子社員を思い出す。 「心当たりあるのかい」 「……ええ」  うーんと新宿のオカンは唸った。 「帰りは□□商店街を通ってピンとくるものがあったら買いなさい」 「わかりました」  香里の声は震えている。 「子どもはそうね、今年なら大丈夫さ」  新宿のオカンはにっこり笑った。香里はあからさまにほっとしている。 「先生、ありがとうございました」  香里は深々と頭を下げた。
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