うちに招き猫がいます

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 新宿のオカンが言った□□商店街はアーケードのある大きな商店街だ。アーケードがあるだけで空間が変わるような錯覚を覚える。 「わあ……」  特別栄えている訳ではないのに、優と香里はどの店にも立ち寄りたいようなワクワクした気持ちになった。 「優さん、みて!」  半分ほど進んだところで店先に出ている徳利(とっくり)に香里は駆け寄った。 「可愛らしいわ。私、これにする」 「奥さん決まりかい?」  香里と店の奥から出てきた店主の言葉に焦った優が値札を見れば、それほど高いものではなかった。  ――ん? これって。  徳利のそばに置いてあった置物を優は二度見した。黒くて丸っこい、両腕に抱えたらすっぽり胸に収まるような大きめのサイズ。 「旦那さんはこちらが気になるのかい?」 「まあ! 可愛い!」  ――汚れているけど、間違いない。  香里の気に入った徳利の横にあるのは紛れもなくあの招き猫だ。 「奥さんもお気に召したのかな。残念ながらこっちは売り物じゃあなくってねえ」 「まあ、そうでしたの」  香里は「まあ」をイントネーションで使い分ける。 「だけど、よければ一緒に持って行きな」 「えっ」 「わあ、ありがとうございます!」  戸惑う優と対照的に香里は明るく飛び跳ねた。 「可愛いがってやってくれ。気をつけてな」 「はい、ありがとう……(おも)っ」  香里とともに優も店主に頭を下げて、□□商店街を後にした。
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