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帰宅して、香里はさっそく招き猫をきれいに拭いた。
「猫ちゃんきれきれしましょうねえ」
恥ずかしさはない。女性特有の静物にも愛を、だ。
「この猫ちゃんが優さんのお宅に現れた招き猫と同じなの?」
「ああ、そうだよ」
帰り道で招き猫に惹かれた理由を話したらオカルト好きの香里は目をキラキラさせて「素敵ね!」と頬を緩めた。
「似てるだけかもしれないけど」
優は言いながら、自分の部屋のタンスから座布団とおちょこを出す。
リビングのテレビボードの隣に座布団を敷いて招き猫を乗せ、水を入れたおちょこを目の前に置く。
「これでよし」
「あら、このおちょこ」
香里は買ってきたおちょこを使われたのだと訴えるような目で少しむっとする。はっと気づいた優は両手を振り「違う違う」と否定した。
「でも同じ絵付けよ?」
優は袋を持ってきて取り出す。確かに同じ絵付けのおちょこ三つと徳利があった。
「前に招き猫が現れた日、駅ビルの骨董市で買ったんだ。もしかしたら元々は四つだったのかもしれないな」
「まあ! 運命的ね!」
香里のオカルト好きに感化され、優も運命という単語くらいじゃ驚かなくなっていた。
しかし週明け、優が地方視察のため出張に出向いた晩。普段「お邪魔になるから」と一切連絡をしてこない香里から一行のメッセージが送られてきた。
「猫ちゃんが消えちゃった!」
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