うちに招き猫がいます

1/16
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
 ぼすん、と物音がした。  音からしてドアを挟んだ部屋のベッドの上。たった今仕事から帰宅したばかりの(まさる)はバッグと上着を放り投げて、手を洗っている。 「ん? なんか落ちたか」  就職を機にひとり暮らしを始めてから4回目の春、年々増えるひとりごとをシンクに向かって呟き、ついでに電気ケトルに水も入れてスイッチを押す。 「あれ、カップねえな」  マグカップは今朝から部屋のローテーブルに置きっぱなしだ。  はあ、とため息をついてドアを開ければ優は瞬きを二回して目を凝らした。 「……は?」  8畳ひと間の1Kアパート。簡素なシングルベッドの上に鎮座していたのは――。 「ま、招き猫?」  紛れもなく【招き猫】だった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!