ただそこにいて

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 付き合っている女と連絡が取れなくなった。ここ三日程、ラインの既読がつかない。ブロックされたのだろう。あの女の性格的に、三日間ラインの返信なしはありえない。  ああ、またか。  俺はそうとしか思わなかった。今まで付き合った女も、皆そうだった。ある日突然連絡をよこさなくなる。毎度同じことをされるのは俺にも原因があるのかもしれないが、考えたところでわかるわけもない。  別にいい。あんな女、たいした女じゃなかったし、惜しくもない。とっとと忘れよう。 「道子」というその女の名前を、ラインから削除する。一ヶ月もすれば、この女と付き合っていたことも、時々この部屋に来ていたことも忘れるだろう。今までと同じように。  いや、この女なら、三日で忘れてしまうかもしれない。元々、存在感の薄いやつだ。美人でも気が利くわけでもない女だったし。  ああ、仕事に行かなきゃな。スマホを置いて、布団から出ようとした。  ふと、視線を感じて、横を見たとき、俺は衝撃で飛び上がりそうになった。 「道子……?」  今さっきまで考えていた女が、すぐ横に立っていた。  いくら存在感のない女とはいえ、突然部屋に現れたらびっくりするものだ。  道子は何も言わずに俺の横に突っ立っていた。俺を見下ろしているようだが、どんな表情をしているのかは、長い前髪に隠れてよく見えない。  何も言わずに突っ立っているのは、道子としてはよくあることだったが、今回に関しては、昨夜泊めた覚えもなく、一体どうやって入ってきたかわからなかった。合鍵なんてものは渡していない。 「おい、お前どうやって入ってき……」  そこで、道子の状態に気づいた俺は言葉を詰まらせた。道子の体が透けている。道子の体の向こう側に、部屋の家具が見えていた。 「もしかしてお前、死んだの?」
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