2人が本棚に入れています
本棚に追加
/25ページ
この間弁護士が来た、両親は離婚した、俺たちは母さんの苗字になった。
「あの、母は、俺たちを育てるといったんでしょうか?」
その弁護士は、大人たちを見まわした。
「隠し事はしないでいただけますか、この子たちには聞く権利があるんです」
その場には、おじさん、幸助じいちゃん、そして晃さんも来ていた。
俺のとなりにいるおじさん、なんかそれだけで心強かった。
「お母さんは、子供はいらないといわれました」
「やっぱり、俺たちに価値なんてないからあいつは捨てたいんだ、くそー、おじさん、俺、どっちの名前も嫌だ、どうせ捨てられるのなら名前なんてくそくらえだ」
苗字に関して法律上今は、離婚したということで親権である母親になっただけだという。
叔父さん今は話を聞こうと俺をなだめてくれた。
家は処分され、財産は俺たちに入ってくる。それでも何もないのと同じだそうだ、親の借金ですべてが清算されたから。
親父の親は、孫、そんなのはいないと俺たちを見捨てた。母さんの方の親がかろうじてお願いしますと頭を下げたと絵美から後で聞いた。やっぱりな、俺たちはいらないんだ。
そう思った。
「では、畑山様のお話はこれで終わらせていただきます、次に、杉様のご依頼に関して申し上げます」
話は続いた。
「養子縁組の件は譲渡されましたので進めさせていただきます」
「では杉本になるんですね」
「はい」
「兄ちゃん聞いた?俺たち杉本になるよ」
叔父さんを見上げた、黙って俺の頭を撫でてくれた。
そして学校も、ここから通うこととなる、学期が始まる、新学期からということにはいかないらしい。
「前の学校に通いますか?」
「俺は嫌だ」
「尚君は?」
「僕も嫌です」
ではそのように手配させていただきます。
ですがこちらは時間がかかりますので、お待ちいただけますかと言われた。
いろんなことが決まっていく、でもそれは俺たちにとってこれからつらいことを乗り越えていくきっかけみたいのものでしかないのだそうだ。
「お父上の畑山氏は引退したとはいえ、政界とはまだ縁を持っていらっしゃいます。目は必ずあなた方ご兄弟のほうに向くと思われます。困ったことがあれば大人を頼りなさい、あなた方には素晴らしい大人がついている、それではわたくしはこれで」
「ありがとうございました」
大人たちは立ち上がり弁護士さんとあいさつをしている。
「兄ちゃん、俺ここに来られるんだね、いてもいいんだね」
それを聞いたじいちゃんがこういった。
「そうだ、もう家族だろ、いまさら何言ってんだ、さてと」
「仕事に行くか」
尚が言った。
「ははは、そうだ、仕事に行くぞ」
ワシャ、ワシャとじいちゃんに頭を撫でられた尚が笑っていた。
最初のコメントを投稿しよう!