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◇◇◇
「亜子ちゃんはどうする? この後ご飯食べに行こうかって話してるんだけど」
17時半定時上がり、帰り支度をする私に由紀さんが声をかけてきた。
仕事上がりにご飯を食べる日だと先にわかっていれば行けたけれど、もう無理だ。
「ごめんなさい、家で弟が待ってるんで」
「うん、また今度ね!」
玄関を開けた先には私の靴よりも大きなスニーカー。
家の中から醤油出汁の良い匂い、今日は何を作ったんだろう?
「姉ちゃん、おかえり~! 今日さ、親子丼にした! 味見してくんない?」
最近声変わりを迎えた陽斗がリビングのドアから顔を出す。
とっくに背も抜かれてしまった。
「ただいま、ご飯食べたら塾行くんでしょ? 早く支度しな?」
「あ」
相変わらず肝心なところは抜けていて、だけど笑うと大人の歯がキレイに顔を覗かせていた。
家には弟がいる、可愛くてバカで姉ちゃんが大好きで、大きくなった弟がいる。
「姉ちゃん、明日集金。テーブルの上に置いておいたよ」
「了解、後で入れとく」
大好きな弟がいる。
【完】
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